荒巻 慶士

UPDATE
2021.07.26

その他

安全に動くための知恵

 コロナ2年目の夏はことさら暑く感じる。マスク着用は習慣となったが、この時期の息苦しさには慣れるものではない。ワクチン接種は、予約にも苦労する状況で、期待どおりに進んでいるとは言い難い。

 

 東京オリンピックは開幕した。しかし、開会式は、マスク姿で入場行進、がらんとしたスタンドに手を振る異例なものだった。

 関連施設の集まる湾岸地域に住んでいるが、巨大な施設の周りでは、多数の警察官と運営関係者ばかりが目につき、外国人はもちろん、人気はまばらで、国際交流の場としては幻に終わった形だ。

 

 応募したチケットのうち、一つだけ当選したものがある。有明アーバンスポーツパークで行われる自転車(BMX)競技。この特設の会場は、青空に突き立つように観客席が設置されている。この開放的な施設に観客を一人も入れないことに、感染防止上どれだけの意味があるのかと疑念も湧いてくる。

 全員動くなと言われても、自宅周辺の公園や図書館、スーパーなどは夏休みの家族連れで密となる。観光地はがらがら、酒禁止では、旅行・飲食は干上がってしまう。

 

 テレビ観戦が模範的な国民なのかもしれないが、ストレスは高まりそうだ。労働相談の現場では、職場でのコミュニケーションを欠くゆえのトラブルや、職員の心身の疲労が目につくこの頃である。

 いつまでも不要不急の外出をやめよというよりも、安全に動くための知恵と工夫がほしい。そろそろそんな蓄積があってもよいはずだと思う。

荒巻 慶士

UPDATE
2021.05.28

その他

司法委員に着任して

 今年から東京簡易裁判所で司法委員の仕事を始めた。

 司法委員は、裁判所の非常勤職員の立場で、民事訴訟の審理に立ち会う。裁判官に意見を述べたり、和解の協議を進めたりするのが職務だ。弁護士が多いが、弁護士とも限らない。普段の業務では、原告・被告という当事者の代理人の立場で出廷することが多いが、審理を執り行うという裁判所の立場で訴訟に関与することに、新鮮な思いをしている。

 

 代理人として出廷しても、自身の担当事件が終われば、その場を離れる。司法委員は、その日予定された事件に軒並み携わることになる。

 簡易裁判所には、貸金を初めとして数多くの事件が提起されて、大量の案件を手際よく処理することが求められるが、他方で、弁護士が代理せず、当事者自ら対応するケースも少なくなく、本人が出頭している場合には、裁判官は丁寧に説明し、また、送達など手続の適正にも配慮する必要があり、大変な業務だと改めて実感する。

 

 代理人としては当事者と同化して目が曇りがちになる主張・立証の状況も、中立的な裁判所の立場だと判断しやすい。双方代理人の立ち居、振る舞いもよく見えるものだ。こうした状況で、裁判官に意見を述べたり、弁護士として感じられる、書面や法廷で現れにくい当事者の〝本音〟を裁判官に伝える際にも、やりがいを感じている。

 

 和解の成立に向けて尽力することは司法委員の大きな役割の一つだ。こまごまとした事案も多い簡易裁判所の訴訟において、適正な条件で早期解決を図りたいという当事者の期待を感じることは多い。公平に臨み、適切な基準を示しつつ、落着できるよう信頼に応えていきたい。

荒巻 慶士

UPDATE
2021.03.26

その他

また桜が咲いて

 3月は別れの季節だ。ただし、新たな出会いに向けて。

 当事務所の後藤弁護士は、父として卒業式に出席したといい、事務局の一人はお子さんの卒園式をまもなく迎えるのに、今から涙が出そうと話す。親としての感慨はどんなものだろう。

 自分の卒業式は相当に以前だが、沁みる心を抱えて、クールに振舞っていたと記憶する。

 

 3月には、なぜか災害を思い出す。

 東日本大震災から、10年経った。その前は地下鉄サリン事件(これは人災というか、犯罪だ)。そして、このコロナ禍は、もう一年もじわじわと続く持久戦だ。事務所近隣でも、久しぶりに訪ねて閉店したことを知り、しばし動けないことがある。

 あとは、経験したわけではないものの、東京大空襲を付け加えるべきか(これは戦争だが)。

 

 困難はある。ただし、克服されるべきものとして。

 諦めず、粘り強く、焦らず、立ち向かいたい。

 また桜が咲いて、そう念じている。

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