荒巻 慶士

UPDATE
2025.01.20

その他

よく気づくということ

 よく気のつく人がいる。

 そういう人は、自分の周りに迷子になった子どもを見つけたり、困っているお年寄りをいつの間に手助けしたりしている。街で多くの知人を探し出し、時には著名人がいると教えてくれたりする。

 こういう友を持つと、なんとなく誇らしい気持ちがする。

 

 自身を振り返ると、気がつけば考え事に流れ、ぼおっとしてうかつなので、声をかけられたり、肩をたたかれたりして、見知った顔に驚くということも多い。日曜日にどこどこにいましたかなどと言われることもしばしばである。

 常識を疑われないかと心配になったり、迷惑をかけない程度に気を配らねばと思うことがある。

 

 気のつく人は、気が回るので、疲れないのだろうか。

 疲れるのだと聞いたことがある。ひとの置かれた状況だとか、感情だとか、受け止めるとしんどいことがあるのは、仕事上での経験からも理解できる。

 気がつかないということも、防御的な反応なのかもしれない。

 

 物事に対する関心の持ち方なのか。気のつく人に、エネルギーを感じることも多い。

 孤立、不安の忍び寄る社会である。国際情勢も荒れている。まず、自分のことを優先、自分を守ることに汲々としがちだ。俺ファーストなリーダーたちを目の当たりにして、こういう時こそ、周囲に目を向けられる感性と強さを持ちたいと思う。

荒巻 慶士

UPDATE
2024.11.22

その他

ルールの軽視、倫理の無視

 最近驚いたことは、数々の違法行為で起訴された身でありながら、ドナルド・トランプ氏が再度、米大統領に選ばれたことである。日本では、政治資金の問題を抱えた自民党が総選挙で敗北したことに国民の良心の一端が現れたかと思いきや、ここへ来て兵庫県知事選で斎藤元彦氏が当選したので、改めて驚いた。県議会に百条委員会が設置されること自体そうある事態ではなく、その調査状況によればパワーハラスメントの疑いが強いことが明らかであるからだ。

 

 ルールに対する意識の弱まりは危険水域にあるかに見える。ルールを取り巻く職業倫理などは無視に近いか。ルールを守ることは最低線であり、政策はそれを守った上での是非論であろう。権力を持つ者のルール違反を是認すると、その権力行使は手段を選ばないことになり、弱肉強食の世界が現れる。

 

 わが法曹界に目を向けると、金融庁に出向中の裁判官によるインサイダー取引が強制捜査を受けたところであり、元検事の弁護士が準強制性交罪で起訴された。検察は過去には証拠を改ざんするという事件を起こしている。違法を監視する立場の者がルール違反をしているようでは、法の支配もがたがたになる。

 

 いったいだれがルールなど守るのかという事態は困る。常識を常識といえる世の中、子どもに常識を語れる世の中でありたいものである。

荒巻 慶士

UPDATE
2024.09.23

その他

定年なき世界

 敬老の日を機に、65歳以上の高齢者の就業者数が過去最高を更新したとの報道に触れた。年々増加しているという。今後もこの傾向は続くだろう。

 足元で高齢者を巡る法律相談が増えている。障害者や女性に関わる相談もしかり。だれもが区別なく働ける社会が志向されている。

 

 使用者には現在、65歳までの雇用が義務化されている。令和3年からは、70歳までの就業確保措置が努力義務とされた。多くの法制度が努力義務を経て本格義務化されており、70歳までの義務化が視野に入っている。定年制の全面廃止も遠くない将来に、おそらく実現するだろう。

 

 定年なき世界がうまく回るためのポイントを考えてみたい。

 まず、就労したい高齢者の取り巻く環境は人それぞれであるから、働き方の選択肢が多く確保されることだ。また、健康状態など変化に応じて、働き方を変えられることが望ましい。

 他方で、使用者の利益も考慮して、処遇を中心とした労働条件については、働きに見合ったものであるべきだろう。けれども、働きがいを感じる待遇ではあってほしい。このあたりの思い違いをなくすためには、雇用に当たって、十分な説明と納得を踏まえた合意が重要だと思う。

 大切にしたいのは、リタイアの時期を自分で選べるということだ。経済的な労働の強制になることは避けなければならない。就労・稼得により年金を減らさないことも必要だ。

 

 かつては一律引退が当たり前だった。父は、いよいよ「サンデー毎日」、と笑っていたものだ。ある意味お気楽であったが、複線的なシニアライフが楽しめる世界は素敵である。 

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