後藤 慎吾

UPDATE
2025.02.28

その他

正義

弁護士法1条1項は弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。と規定している。しかし、弁護士が実現するべき正義が何であるかは難しい問題である 

 

私が普段仕事をしているときには、法令やそれを解釈した判例の規範に照らして事案を分析すれば足り、法令や判例が正義にかなうものであるかまで考えることは少ない。本来、法令や判例は正義を具体化するべきものだからだ。しかし、このような前提が妥当しない場合もある。 

 

最高裁は、昨年言い渡した旧優生保護法違憲判決において、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めた改正前民法724条後段の規定について従前採用していた法理を維持した場合には、「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することのできない結果をもたらすことになりかねない。」と判示して、過去の判例を変更した。 

 

この判決は、法令や判例があるからといって思考停止してはならない場合があることを示している。弁護士は、その使命を果たすため、法の世界における常識を疑い、正義とは何かを探求する姿勢を持つことの重要性を忘れてはならない。 

荒巻 慶士

UPDATE
2025.01.20

その他

よく気づくということ

 よく気のつく人がいる。

 そういう人は、自分の周りに迷子になった子どもを見つけたり、困っているお年寄りをいつの間に手助けしたりしている。街で多くの知人を探し出し、時には著名人がいると教えてくれたりする。

 こういう友を持つと、なんとなく誇らしい気持ちがする。

 

 自身を振り返ると、気がつけば考え事に流れ、ぼおっとしてうかつなので、声をかけられたり、肩をたたかれたりして、見知った顔に驚くということも多い。日曜日にどこどこにいましたかなどと言われることもしばしばである。

 常識を疑われないかと心配になったり、迷惑をかけない程度に気を配らねばと思うことがある。

 

 気のつく人は、気が回るので、疲れないのだろうか。

 疲れるのだと聞いたことがある。ひとの置かれた状況だとか、感情だとか、受け止めるとしんどいことがあるのは、仕事上での経験からも理解できる。

 気がつかないということも、防御的な反応なのかもしれない。

 

 物事に対する関心の持ち方なのか。気のつく人に、エネルギーを感じることも多い。

 孤立、不安の忍び寄る社会である。国際情勢も荒れている。まず、自分のことを優先、自分を守ることに汲々としがちだ。俺ファーストなリーダーたちを目の当たりにして、こういう時こそ、周囲に目を向けられる感性と強さを持ちたいと思う。

後藤 慎吾

UPDATE
2024.12.18

企業法務関連情報

お客様は神様ではない

今年の秋に、私が法律顧問をしている会社でカスタマーハラスメントへの対応に関する研修の講師を担当した。その会社は消費者向けのサービスを提供しているので、サービス利用者や時には利用者でない人からも電話などでハラスメントを受けることがあるとのことだった。実例を聞いてみると、カスタマーサービスの担当者がひどい暴言を言われていて、こちらまで悲しい気持ちになった。

 

カスタマーハラスメントは、多くの場合、顧客が事業者の提供する商品やサービスに不満を持つことが起点となっている。この不満の原因が何なのかを検証し、その原因に対処し、予め不満の芽を摘むことが、事業者がカスタマーハラスメントを抑止するための基本となる。また、顧客が不満を持った後の顧客への対応の仕方も重要だ。カスタマーサービスの担当者の商品やサービスに関する知識は十分か、顧客に接する際の態度に改善するべき点がないかについても検討する必要がある。

 

しかし、事業者がどれだけ努力しても、顧客自体が変わろうとしなければ、カスタマーハラスメントはなくならない。「お客様は神様です」「The customer is always right.」といった言葉があるが、これらの言葉は、顧客が期待する商品やサービスの提供に徹するという事業者側のあるべき態度を示したものであって、顧客の側がこれを字義どおりに理解して、不満があれば事業者に暴言を吐いても構わないと考えるのは誤りだ。

 

東京都が今年10月にカスタマーハラスメント防止条例を制定し、国も事業者にカスタマーハラスメントへの対応を義務づけるための法改正を検討するなど、我が国においてカスタマーハラスメントの抑止に向けた機運が高まりつつある。これらの動きによって、カスタマーハラスメントの問題に関する社会的な意識に変化がもたらされ、事業者と顧客の双方が、互いの人格を尊重し、よりよい関係を築いていく契機になってくれればと願っている。

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