後藤 慎吾

UPDATE
2025.04.28

その他

怒り

トランプ氏が米国大統領に就任して以来、彼の判断や言動に世界が振り回されているが、彼を大統領の座に押し上げたのは、米国の経済的繁栄から取り残された白人労働者の怒りだという分析がある。人間の怒りは、時として世の中を変えるような大きなうねりをもたらすことがある。 

 

他方で、怒りの感情は厄介なものでもあり、それに囚われて行動した場合、問題を引き起こすことが多い。パワーハラスメントやカスタマーハラスメントはその例だ。 

 

かなり昔の話になるが、私自身、怒りの感情から、ひどい暴言を吐いてしまったことがある。その後、その相手に謝罪したが、今でもそのことについて後悔している。その出来事があってから、私は、怒りの感情を捨てようと努力するようになった。 

 

弁護士として仕事をするうえでも、怒りの感情は、冷静な分析や判断を妨げるだけに極めて有害だ。人間なので難しいこともあるが、これからも心の平穏を保つように心がけたい。 

荒巻 慶士

UPDATE
2025.03.18

その他

民主主義の危機

 連日の報道に接し、トランプ氏が米国の大統領に就任してから起きている事態に驚いている。感じるのは、大統領の権限の大きさと、ほかでもない民主主義の現れである選挙の恐ろしさである。

 日本国憲法の前文には、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なもの」であると書かれている。この言葉には、他を顧みない振る舞いが戦禍を招いたという反省がある。現憲法は多くを米国に依拠する。「押し付け憲法論」という主張があるくらいである。「押し付け」たその米国が、利己的に国際的な協調を乱している。

 

 大学を卒業し、米国へ留学した。海外に行くのも初めてのことだった。飛行機の中でフィッツジェラルドの「グレートギャツビー」を読んでいたら、隣の席から話しかけられた。出版社の編集者という。ニューヨークに夜に到着する便であるのに宿の予約もしていないのを気にかけて、自身の宿泊先のホテルまで同行してくれた。そこにはある種の冒険があり、夢や憧れがあった。

 米国の矛盾を感じることも多いが、自由や民主主義、法の支配という原則に関しては信頼があった。ここへ来て、喪失感は深いものがある。

 ウクライナのゼレンスキー大統領には、その感謝の言葉に、アメリカは自国の安全のためにやっている、これはエゴであり申し訳ない、くらいのことを言ってほしかったと言ったら期待しすぎなのか。

 

 民意が正しく反映されて、それが政策として実行されてきたのか。これに関する積年の不満が投票行動に現れたことはないのか。そういう指摘を聞く。

 振り返って日本の姿はどうか。投票先がないと感じて久しい。愚策の連続にため息が出る日々だが、米国という〝親〟離れが避けられない今、声なき声に耳を傾け、声なき声を上げることが必要だと思う。

後藤 慎吾

UPDATE
2025.02.28

その他

正義

弁護士法1条1項は弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。と規定している。しかし、弁護士が実現するべき正義が何であるかは難しい問題である 

 

私が普段仕事をしているときには、法令やそれを解釈した判例の規範に照らして事案を分析すれば足り、法令や判例が正義にかなうものであるかまで考えることは少ない。本来、法令や判例は正義を具体化するべきものだからだ。しかし、このような前提が妥当しない場合もある。 

 

最高裁は、昨年言い渡した旧優生保護法違憲判決において、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めた改正前民法724条後段の規定について従前採用していた法理を維持した場合には、「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することのできない結果をもたらすことになりかねない。」と判示して、過去の判例を変更した。 

 

この判決は、法令や判例があるからといって思考停止してはならない場合があることを示している。弁護士は、その使命を果たすため、法の世界における常識を疑い、正義とは何かを探求する姿勢を持つことの重要性を忘れてはならない。 

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