荒巻 慶士

UPDATE
2020.07.15

その他

一国二制度の終焉

    香港は終わった。ネット上では、そんなつぶやきが聞かれた。先月30日、香港国家安全法が成立、施行されたことを受けてのものだ。

 これにより反中的な言動が犯罪とされるおそれが生じ、彼の地における政治活動の自由は著しい制約を受けることとなった。早速、その翌日の今月1日には、逮捕される者が出た。最初の逮捕者は、バックパックの中に「香港独立」と書かれた旗を持っていたのだという。

 

 日本では憲法上保障される権利を不当に制限するものとして、違憲無効とされる法律といえるが、香港においても、デモ隊の覆面を禁じる条例に関し、裁判所が憲法に相当する香港基本法に違反すると判断し、この条例の執行が停止されたことがある。これについては、昨年11月のコラムで、香港は中国に属することにはなったが、一国二制度はまだ維持されているのだと認識したと書いたところだ。

 

 香港基本法はそのままであるから、国家安全法もこれに反し無効ともいいうる。香港の立法機関である議会の議決を経ていない点でも、その違憲性は明らかだといえるが、国家安全法によれば、国家の安全にからむ事件を審理する裁判官は行政長官により指名されるのだという。

 そうすると、同法を違憲無効と判断される余地はまずないということになる。

 

 国家安全法の内容と制定の経過を見れば、香港において、政治活動の自由とともに、それを制度的に担保する三権分立が排除されており、一国二制度はまさに終焉したといえそうである。

 同法の施行を伝えた新聞は、その紙面で、ふるさと納税に関し泉佐野市が国に逆転勝訴した最高裁判所の判決を報じていた。自由主義・民主主義という価値を国の根底に据える日本国民として、香港市民の〝窒息〟には黙っていることはできない。

後藤 慎吾

UPDATE
2020.06.30

その他

Necessity is the mother of invention.

今日は2020年6月30日。今年の半分が終わろうとしていますが、未だ世の中はコロナウイルス一色。おそらく来年までこの問題は継続しそうです。

 

世界では多くの人命が奪われ、人々の移動や交流が著しく制限されています。他方で、デジタルトランスフォーメーションやテレワークへの対応など、人々の考え方やあり様にも急速な変化が生じています。

 

欧米に”Necessity is the mother of invention.”ということわざがあります。直訳すれば「必要は発明の母」になりますが、課題が認識されなければそれを解決する新しいアイデアも生まれないということを意味しています。

 

我々はこの問題によってこれまで目を背けてきた様々な課題を直視することを迫られました。コロナウイルスは忌むべき存在ですが、それへの対応を契機として、これまで積み残してきた国家的・社会的な課題を一掃する原動力とすることが求められています。

荒巻 慶士

UPDATE
2020.05.06

その他

緊急事態宣言の延長に際して

  瞬く間に感染の広がりを見せた新型コロナウイルス。わずか1か月で国内外の様相が一変した。自由な外出はままならず、不要不急とは何か日々判断を迫られる。まるで良心を試されているようだ。

 

 わが事務所のある日本橋界隈も、デパートなど商業施設は軒並み営業を取りやめ、神田方向に多くある小規模な店舗には当初営業をしているところもあったが、先月の緊急事態宣言後、ほとんど休業へ傾いた。街は閑散として静まり返っている。

 当事務所も、秘書ら事務局の出勤をできるだけ控えてもらい、弁護士が中心に事務所を守る形にした。法律相談もメールや電話、ウェブ会議などを利用して続けているが、不便なことこの上ない。しかし、こんな時こそやれることをしっかりやる、必ず克服できる問題と心得て前を見ている。

 

 何と言っても直撃を受けているのは、業務のスタイル上人が集まらざるを得ない小売・飲食・ホテルなどのサービス業だろう。そこに働く人の暮らしや経営者の心労を思う。緊急事態宣言が延長され、売上のない中で負担を続ける人件費や賃料などの固定費は、まさに死活問題であろう。

 人件費については、雇用調整助成金の拡充が始まり、賃料についても公的な支援が検討されていると聞くが、手を差し伸べる速度も問題だ。

 

 営業の自粛要請は、法律に基づく国や自治体の要請だ。客観的に見て使用・収益ができない状況の下で、その対価である賃料を何とかしてくれという考えは公平に適う。借主の創意・工夫も必要だろうが、賃料が免除・減額されるべきであるという考えには法的な根拠がある。公的な支援がなかなか届かない場合には、手を挙げてしまう前に貸主との協議・交渉をしてみてほしい。弁護士が助力することも可能だ。

 

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