荒巻 慶士

UPDATE
2019.09.30

その他

懐かしくて新しい出会い

 高校生のころ、斜に構えていたから、文化祭とか体育祭とか〝青春〟めいたものが嫌だった。その後、いろいろなことがあり、大抵のことは受け入れるようになり、視野も広がって、何事にも興味を持てるようになった。さまざまな人と出会う弁護士という仕事、その前に就いていた新聞記者の仕事も、こうした心境の変化を与えたと思う。

 そういうわけで、この夏開かれた出身高校の同窓会に、初めて出かけた。といっても、これまでそのような会が行われていることも知らず、今回は幹事のメンバーが同窓会名簿を使って、広く呼びかけてくれたということだ。

 

 当時バンドを一緒に組んでいて、行くのを約束し、会うのを楽しみにしていた仲間、思いがけず再会できたクラスの友だち…。長い人では、まさに卒業以来だから、30年以上会っていないことになる。

 その年月を埋めるには、あまりにも短い時間ではあったが、会ってみれば呼び捨てで、忘れかけた記憶をみなでつなぎ合わせては笑い、会が終わるころには、すっかり高校生に戻った気分だった。

 

 不思議だったのは、級友たちは、街で会ったとしたらわからないだろうのに、顔を合わせて話してみれば、話し方、物腰、当時のままで、そのまま歳月を経た風貌なのだ。「○○か、まったく記憶にないけだ、身体が覚えてるよ」、と声を上げた友人がいた。

 まさにそういう感じ。そういえば、こう話した友人は、昔から、言うことに感覚の鋭さがあったっけ。無垢な心で、見、聞き、感じていたあのころがよみがえる。お前も結局、変わらないと言われた。

 

 友だち、そして自分にも、懐かしくも、新しい出会いだった。

後藤 慎吾

UPDATE
2019.08.14

その他

夏の思い出

今年は7月の天候不順が打って変わって8月は猛暑になりました。高校野球も始まり夏本番です。私の子供たちは毎年妻の実家のある大阪に帰省しており、今も大阪に帰っています。私は仕事がありまだ東京です。

 

夏の思い出は他の季節のものに比べて記憶に残っているものが多いように思います。子供の時の思い出は特にそうなのではないでしょうか。

 

私は子供のころ夏休みになると、秋田県稲庭町という山深い町の中でも特に人里離れた場所にあった父親の実家に帰省するのが恒例でした。当時住んでいた埼玉から特急で6時間くらい揺られてたどり着いた先はまさに別世界。実家の前には山を切り開いて作った田んぼが広がり、川ではサンショウウオ、山では様々な昆虫を追いかけました。夜は満天の星。車なんて通らないので、実家の前の道路にゴザを敷いて親戚のみんなで何時間も星空を眺めました。

 

夏の盛りにセミの鳴き声を耳にしつつ目を閉じると今も当時の記憶が呼び起こされます。子供たちにも大人になっても思い返せるような素敵な夏の思い出を作ってもらえたらと思っています。

 

荒巻 慶士

UPDATE
2019.07.21

最近の法律関係情報

許される懲戒とは

 民法822条は、親権者は、監護・教育に必要な範囲内で子を懲戒することができる、と定めている。こういう条文があることをご存知なかった方もいると思うが、今、この規定の改正が、削除を含めて、国会や法務省で検討されている。虐待に関する痛ましい事件報道に接するが、この懲戒権が虐待の口実にされているという。

 

 虐待に当たるような行為が、親権者による懲戒として正当化されるはずがないと思いつつ、民法の注釈書として古くから著名な注釈民法(新版)を紐解くと、「しかる・なぐる・ひねる・しばる・押入に入れる・蔵に入れる・禁食せしめるなど適宜の手段を用いてよい」と記載されているので、少し驚く。しかし、この後は、「目的を達するについて必要かつ相当な範囲を超えてはならない…必要かつ相当であっても、懲戒の方法・程度はその社会、その時代の健全な社会常識による制約を逸脱するものであってはならない」と、慎重に続けられている。懲戒権の内容も、時代が移り替わるとともに、解釈の変更があり得るということだ。

 この6月19日に、国会では、児童虐待防止法の改正法が成立し、その14条には、体罰が、監護・教育に必要な範囲を超えるものであることが明記され、懲戒として許されないことが明確になった。

 

 ところで、最近、自宅の近くで、「あんたは同じことを何度言われたらわかるの」と、母親が子どもに大きな声で問いかけるのを見た。「ねえ。聞いているの。ねえ」と、両肩をつかんでゆすり、なじるようでもある。これは、親の子に対する指導としてセーフか。無理はない、気持ちはよくわかる、そもそも懲戒(罰)ではないしね、と思う。最後に、「何度言われてもわからないあんたは、馬鹿なの」と言っていたら、どうだろう。

 家族法の世界から目を転じて、労働法の世界でも、懲戒というものがある。会社の社員に対する懲戒権を明示的に定めた法律はないが、一般的には、社内秩序を守るために懲戒はなし得るものとされている。しかし、肉体的に痛みを与える罰は論外ということになる。それでは、新人の肩をつかんで、上司が、「お前はいつまで同じミスをしているんだ。何回言ったらわかるんだ」と言ったらどうだろう。一定の手続の下で処分する必要があるという点は横に置いて、訓戒といった種類の懲戒もある。最後に「アホか」と言ったら? このようなやり方では、パワハラの誹りを受けて、逆に懲戒されかねないというところだろうか。

 

 企業内でも、かつては、鉄拳制裁というものがあった。しかし、今は、「愛のムチ」は、会社でも、家庭でも、許されない時代になった。さらに、表現や言葉遣いまでこまかく問題になっていくと、ちょっと窮屈にはなってくる。

 

ページトップ